「どんな言葉が、差別偏見になるの?」
「差別用語を気にし過ぎて、話すのが怖い。最低限注意すべきことを知りたい」
「PCってパソコンのことじゃないの?」
そんなお声に おこたえします。
【本記事の内容】
【海外接客に必須のプロトコールと国際マナー】
押さえておきたい ポリティカル・コレクトネスの具体例10選
✔ 記事の信頼性
私たちは、客室乗務員や外資系企業で働いた経験のあるメンバーが集まり、“国際標準の接客” を専門として、 日本・海外 両方の 大事なお客様への対応に特化したコンサルティング&研修 をしています。
個人レッスンから、飲食店・小売店、企業や学校、オリンピックや コンサート、G20ほか 多種多様な現場に関わってきました。そんな経験から、この記事が皆さまのお役に立てたら嬉しいです!
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皆さんは、自分が悪気なく使った言葉で、周りの人が「え?」という顔をしたり、反対に、周囲の人のふとした言葉を聞いて「そんな言葉を使うの?」と感じた経験はあるでしょうか? この間まで、よく使われていた言葉が、“良くない”とされることになって、戸惑いを感じたことがあるかもしれません。
例えば、保育園の先生は、以前は「保母さん」と言われれていましたが、今では「保育士」という呼び方になっていますし、「看護婦さん」という言葉が、今では「看護師」という呼び方になっています。 これは、男女ともに性差なく活躍できるのに、女性だけに限定する呼び方が、そぐわなくなったためです。 とはいいながらも、実際には、親戚のおじいちゃんおばあちゃんが「看護婦さん」と呼び続けている、なんていうこともよくあり、おじいちゃんおばあちゃんだけに限らず、私たちが、慣れ親しんできた呼び方を変えるのには、意識と努力がかなり必要といえるでしょう。
差別や偏見を含む用語を取り除いて、どんな人にとっても公正・中立な表現を使うこと を ポリティカル・コレクトネスと言います。英語では political correctness、頭文字を取って PC と呼ばれることもあります。この概念は、1980年代にアメリカで始まって世界中に広がり、各国で性別・人種・民族・宗教・職業・疾患ほかに関して、表現の言い換えにつながっています。
これから、具体的な例を紹介していきますが、「え?これもダメなの?」などと驚くこともあるかと思います。 最近は、ポリティカル・コレクトネスが注目され過ぎて、「この言い方はどうなんだ!」と、少々行き過ぎと思える 言葉チェック をする人もいるため、それに対して、欧米のメディアでは、皮肉った記事 や コメディーでの風刺がされたりもしています。
ポリティカル・コレクトネスは、言葉によって、幅広く様々な人が、イヤな思いをすることのない世の中にする、という動きですが、実際のところ、Aさんの前で従来の言葉を使っていても、Aさんは別になんとも思わないけれど、Bさんの前では、不快だと感じさせてしまったり、聞き手による という側面が多分にあります。
ポリティカル・コレクトネスで失敗していまう人にはいくつかタイプがありますが、まず ポリティカル・コレクトネスについて無知というタイプ、また、ポリティカル・コレクトネスについて知らなくはないのだけれど、話を面白くしようとするなどサービス精神から不適切な事を言ってしまうタイプ、がよく見受けられるように感じます。 サービス精神から、結果的にたたかれてしまうなんて、気の毒ですよね・・・。 個別の会話では、従来の言葉を使っても問題がない場面もあるかとは思いますが、下記のような場合は、より一層ポリティカル・コレクトネスに注意する必要があります。
それでは、具体的にみていきましょう。まずは、職業や立場に関する言葉です。
まず、両方の言葉の最後の「マン」が、男性のみを指すので、ビジネスウーマン などという言葉もあるのですが、 英語では、男女ともに使える business person (ビジネスパーソン)と言うようになりました。ただ、気を付けたいのは、英語でビジネスパーソンと言った場合は、実業家・経営者という意味ですので、会社員という意味であれば、office worker と言いましょう。尚、会社員を意味する「サラリーマン」は、日本でとても一般的な言葉ですが、サラリーウーマンとは使いませんし、そもそも和製英語ですので、英語では通じません。
日本語では性差がないのですが、 英語にすると、警察官 policeman ・ 消防士 fireman という従来の言い方が、現在では、police officer ・ fire fighter と言うようになりました。
スチュワーデスという言葉については、私たちが客室乗務員を母体にしているので、とてもよく質問される質問です。 スチュワード steward(男性)・スチュワーデス stewardess(女性) という 男女別の言葉がありますが、現在では、日本語で「客室乗務員」「フライトアテンダント」「キャビンクルー「キャビンアテンダント」などと言います。 英語では、flight attendant ・ cabin crew と言い、日本人が呼びがちな キャビンアテンダント は、使われません。
英語では、後ろにess をつけることで女性形の単語になりますが、このタイプの他の言葉に、waiter(ウェイター) waitress(ウェイトレス) があります。 店内で働いている女性スタッフに対して「あのウェイトレスさん」と呼んでいるんだから、間違っていないじゃないか と感じるかもしれませんが、そもそも、この人は男性?女性?と判別してから呼び名が決まるため、男性か女性かどちらかを明確にすることは不要では?ということから、英語では、server (サーバー)とか、waitstaff (ウェイトスタッフ)などと呼びます。
日本語では、両親の国籍が違う場合、ハーフ と呼んだりします。 なぜ、half 半分 という呼び名になったかというと、お父さんとお母さん と半分ずつ 違うルーツ・国籍だから、ということで言われ始めたようです。 ただ、人に対して「半分」というのは大変失礼な言い方だとして、2種類の違ったルーツ・国籍を持つんだから、「ダブル」と呼ぼうとした時期もあったようですが、しかし、そうすると、ダブルでない人は「シングル」で、劣っているのか、と論争になり、結局、ダブルは、定着していないのが現状です。
ちなみに、ハーフは、和製英語ですが、海外ではどうなのかというと・・・ 両親の国籍が違うなんていうことは、ざらにあることです。周囲の人の気分を害さずに、会話のなかで伝える必要があるなら、「彼のお父さんはフランス人で、お母さんがブラジル人」などと言えます。ただ、初対面から 国籍やルーツを聞いたりするのは、避けましょう。
ある国が、単一民族国家 か 多民族国家か の認識や考え方の違い には、個人個人強く意見をもっている場合も多く、どちらかを当たり前のように話す姿勢は、もう一方の側にいる人を非常に不愉快にさせるでしょう。
また、先住民族、たとえばアメリカの先住民族を例にとると、先住民族とひとまとめにするのではなく、具体的に個別の民族名で呼ばれるほうが好まれます。一般に、先住民族の個々の民族名まで詳しく知らないことも多いかと思いますが、もし、国際交流や海外ビジネスほか、関係する立場になる可能性があれば、ユート族、ナバホ族 など きちんと基本情報を把握していくことをおススメします。
クレヨンやストッキングなどでお馴染みの「肌色」、これもポリティカル・コレクトネスによって、もう「肌色」という言葉を、メーカーさんは使わなくなりました。理由は何でしょうか? そうです、人によっていろんな肌の色があり、従来の「肌色」が標準ではないから、ということです。 ある国で、クレヨンメーカーさんが、訴えられて裁判になった頃から、「肌色」を「うすだいだい色」とか「ペールオレンジ色」と呼ぶようになりました。 ストッキングも今では、「ナチュラルブラウン」「ハニーブラウン」「ヌーディベージュ」などと、若干そのネーミングだけでは分かりにくい(苦笑)色表示になっていますよね。
プロトコール5原則のひとつに、「異文化の尊重」がありますが(詳しくはこちらの記事→ 海外対応に必須のプロトコール5原則) 自分とは異なる宗教を信じる人への配慮は、とても大切です。不用意に宗教について発言することは、人の大切な信条に関わることですのでタブーといえます。(詳しくはこちらの記事 → 初対面の人にタブーの 6つの話題・NG質問とは?)
日本では、クリスマスを祝って → 大晦日に、お寺に除夜の鐘を突きに行き → お正月には神社に初詣でに行く、という方も多いかと思いますし、「あのお寺の庭園が見事だからよく行く」とか「桜と言えばこの神社だから、毎年行く」、そんなことも多々あるかもしれませんが、この感覚のまま、海外の人と、宗教を軽い話題として話すと、大変なことになる可能性もありますので、注意しましょう。
例えば、メリークリスマス! という言葉は、キリスト教徒を前提にしている言葉のため、公式には、Merry Christmas!という言葉を使わず、Happy Holidays! を使うようになったり、それに対して、キリスト教徒からの反発があったりと、日本人の想像を超える やり取りが生じました。 他にも、イスラム教徒のアメリカ入国一時停止、を主張した政治家の公約も、大論争を巻き起こしたのが記憶に新しいかもしれません。
以前は、パソコンのキーボードを見ずに、キーを打つことを、ブラインドタッチと呼んでいましたが、ブラインド(意味:盲目の)という部分が、目の不自由な人に対する差別用語ということで、最近はタッチタイピングというようになっています。(英語でも touch typing と言います。) そうはいうものの、依然としてブラインドタッチという言い方に慣れた人もいて、以前、あるWEB制作会社さんがこうおっしゃっていました。「タッチタイピングが十分に広まっていない頃は、検索のキーワードとして全然使えなかった。皆がブラインドタッチで検索するから・・・」 WEB会社としては 差別用語だから使いたくない、でも、多くの人がブラインドタッチで検索する、という葛藤があったのですね・・・。
現在調べてみますと、Google検索では、タッチタイピングは782万件のヒットに対して、ブラインドタッチは421万件のヒットなので、タッチタイピングの認知度が格段に高まっていることが分かります。
尚、英語でも、 「blind は差別語であり visually impaired と言うべきだ」 と主張する人もいますので、ご注意ください。
さらに、意外なところでも PCが関わってきます。 生物の名前にも、差別用語が残っている場合もあり、例えば、「メクラ ウナギ」という名前で 以前呼ばれていた魚は、不適切ということで、2007年に日本魚類学会が「ホソヌタ ウナギ」と名称変更をしています。 生き物やモノ・行動の名前にも差別用語が潜んでいるので、多方面に配慮が必要ということが分かるかと思います。
今回は、【海外接客に必須のプロトコールと国際マナー】意識したい ポリティカル・コレクトネスの具体例10選 をみてきました。 このような差別用語の説明をさんざんした後に、「さぁ、息抜きにグループで少しフリートークをしてみましょう」と私どもの研修で言うと、「シーン」として、皆、PCにふれるのが怖くなり、会話ができなくなるという心理状態になります・・・(笑) 最初にも書きましたが、幅広く様々な立場の人が不快に思うことのない社会をつくるということで、聞き手への配慮が、何よりも重要です。しかし、一方で過度に「あれ言った、それ言った」と重箱の隅をつつくような状況にはしたくないですよね。会話しづらくならないためにも、まず第1ステップとしては、今日ご紹介した内容を含め、多くの人が反応しやすい“認知度の高いNGワード”から優先的におさえることをおススメします。
特に、海外のお客様への接客や、不特定多数の人へのスピーチ・広報などが必要な人は、「あ、ごめんね、そういうつもりではなかった」では済まず、信用を損なったり、炎上トラブルになったりしてしまいます。適切なコミュニケーションをが必要な人向けに、事前にトレーニングをしたり、成功例や失敗例も交えて、楽しく学べる研修をご提供していますので、よろしければ お気軽にお問合せください。(プロトコール研修・コミュニケーション研修・国内外VIP対応研修のお問合せはこちら→ https://4cs-i.com/contact/ )
それではまた次回、お会いしましょう。最後までお読み頂いてありがとうございました!
〈2022年2月2日投稿〉
株式会社フォーシーズインターナショナル
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