「マナーを教える立場の人が、注意することは?」
「自分は礼儀正しいのに、周りから浮いている気がする・・・」
「良いマナーが、マイナスになってしまう例が知りたい」
こういったお声に おこたえします。
【本記事の内容】
✔ 記事の信頼性
私たちは、客室乗務員や外資系企業で働いた経験のあるメンバーが集まり、“国際標準の接客” を専門として、日本・海外 両方の 大事なお客様への対応に特化したコンサルティング&研修 をしています。
個人レッスンから、飲食店・小売店、企業や学校、オリンピックや コンサート、G20ほか 多種多様な現場に関わってきました。そんな経験から、この記事が皆さまのお役に立てたら嬉しいです!
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世の中には、マナーにとても意識が高い人、反対に、マナーへの意識が高くない人、そして、この2タイプの間にさまざまな程度の違いで、「この部分のマナーが良いが、あの部分のマナーには疎い」などという無数のタイプがあるかと思います。
一般的に、「マナーに意識をもつべき」、「マナーが良く、きちんとしていて素晴らしい」などと、マナーはポジティブなイメージで語られることが多いのですが、マナーの良いことが、かえって人間関係にマイナスに作用することが、稀にあります。今日はあえて、“マナーの良い人が陥りやすい罠”として、マナーに意識が強い人が、気を付けたいことを3点、ご紹介したいと思います。
マナーとは、周囲への配慮・思いやりであり、相手との人間関係を良くするために大切と考えて、マナーを学んで実践してきたはずが、いつの間にか、自分にマナーの知識があること・マナーを実践できていることを 他人と比較して、自己満足 となっていることがあるかもしれません。 それが、どんどんエスカレートすると、最近たまに聞かれるような「どんなことにも謎のマナーをつくり、人に強制する」という状態にもなりかねません。
「自分はマナーが良いのに、周りから浮いている気がする・・・」という場合、マナーを “単体” で考えているのかもしれません。そもそもマナーとは、相手がどう感じるかが大事ですので、“マナー” と “相手の人の心理” を 掛け合わせて 考える必要があります。
まず、一つ目は、マナーに意識が高い人のなかには、自分が学んで、慣れ親しんでいる方法こそが正しいと思い、「こうすべきだ、ああいうふうにしてはいけない」という強い信念を持っていらっしゃる場合があります。 実際のところ、こういうやり方もあるし、あんなやり方もある、というマナーの項目も存在します。そういった複数のやり方の選択肢から、ひとつだけ自分が正しいと思うものだけを主張し、他のやり方をかたくなに批判する、これでは、結局、「自分が正しい、相手は間違っている」という構造になり、マナーの目指す本来の意義とは、大きくかけ離れたものになってしまいます。
とくに、長年、部下や新入社員・学生の方々にマナーを教える立場にいる人にとっては、ご自身が続けてきたマナーの習慣・実践 とは違うやり方を受け入れるのが難しい、そんな場面を見かけることがあります。 時を経て変化してきたマナーや、他のやり方 については、柔軟に受け入れられるように気を付けたいものですね。
二つ目は、マナーに意識が高い人は、良かれと思って、マナーを知らない周囲の人に、頼まれもしないのに 教えようとすることがある、という点についてです。
具体例を二つ挙げたいと思います。 皆さんは、「着物警察」という言葉をご存じでしょうか? 着物の着方や振舞いにもマナーがありますが、まだ着物を着慣れていない方が、着物を来て街を歩いていると、“着物の先輩”ともいうべき、着物歴の長い人生の先輩が、知り合いでもないのに、「おはしょり がおかしい」「裾丈がおかしい」などと 指摘したり、勝手に手で触れて、直してあげようとする、などということが実際にあります。確かに、着方が少しおかしいのかもしれません。しかし、慣れない中、和服を着てみよう と思い立って、普段より動きづらいなか、特別な時間を楽しもうとしている人にとっては、水をさされたような気持ちになり、「もう、着物はやめよう・・・」とネガティブな体験に感じられてしまうでしょう。日本人で着物を着る人が少なくなっている傾向にある今、このような体験は、さらに着物人口を減らす要因にもなりかねません。
着物がミニスカート風とか、「半分洋装・半分和装」など、ギョッと驚くこともあるかと思いますが(笑)様々な新しい形で、ファッションとしても親しまれていくなか、自分の物差しだけで、言い方を深く考えずに「あれはダメこれはダメ」と 人に教えることのマイナス面を考えることも 必要ですね。
もう一つの「人に教える」例です。
私たちは、学校でもよくマナー講習をさせて頂くのですが、あるビジネスマナーの項目を伝えると、前回出席していてその内容を学んでいた生徒Aさんが、前回休んだ生徒Bさんに、「え?そんなことも知らないの?こうだよ」と教える という場面が時々あります。“Aさん、よく覚えててくれたなぁ” と嬉しい反面、“いやいや先週まで Aさんも、おんなじだったよ“ と講師は心の中で思う(笑)ほほえましい場面ともいえるのですが、あるマナーを知った人が、知らない人に対して教える 言い方が良くないと、知らない人側は、「ふーん」と冷めた気持ち、イヤな気持ちになることが予想されます。
世の中には、「マナーなんて全く意味がない」とか、「極端に毛嫌い」する方がいらっしゃいます。それは、おそらくですが、それまでの生活のなかで、他の人に「こんなことも知らないの?」といった、マナーが原因でネガティブな体験があったのではないかと想像します。逆に、もともと、マナーに特に興味がない人だったとしても、「〇ちゃんは、お行儀がいいね」「きみは、いつもきちんとしてるね」「こんなマナーまで知ってるの⁈」なんて褒められた経験がある人は、マナーをプラスのイメージに思うでしょう。
幼少期や学生のうち、また、社会人にでてまだ間もないうちに、マナーに苦手意識をもたないように、周囲にいる人は、言い方を工夫してその人に伝えるのが、マナーに意識を高く持つようにする近道 なのではないかと思います。
三つ目は、正しいマナーをどんな時も “くずさない” ということについてです。状況や周囲の人の様子にあわせず、自分が身につけた正しいマナーに固執するという意味です。例えば、以前、「ワイングラスやシャンパングラスでは、乾杯する時に、グラスをカチーンとあてない」ということを書きました。(記事はこちら) でも、もし乾杯の相手が、グラスをあててこようとしたら、どうしますか?
「ワイングラスは、あてないのが正しいんですよ」と言ったり、「ワイングラスがあてられないように逃げる(笑)」などすると、相手はきっと、ばつの悪い思いをされるのではないでしょうか。そんな時には、静かにグラスをあわせる、くらいが最適な判断かもしれません。
マナーを考える時によく例に出されるのが、フィンガーボールの話 です。ある国の女王との食事中に、テーブル上に置いてあったフィンガーボール内の手洗い用の水を、飲み水だと思って飲んでしまった、他国のお客様がいました。女王は、怒るでもなく 注意するでもなく、ご自分もその手洗い用の水を飲んだ、という話です。(実はこの話には、登場人物が女王ではなく、ホスト役やゲスト役が異なるいろいろなバージョンの話があったり、「指摘してあげるのが本当の優しさだ!」という主張の方もいらっしゃるのですが、「指摘や注意の仕方」ほか、このエピソードにまつわる話は、また別の機会に書きたいと思います。)
このように 異国/異文化の相手であれば、より一層、相手の流儀・文化に配慮する必要があります。マナーには原則と運用があり、日本国内でも、例えば、葬儀に参列する時には、女性は、肌色や黒色のストッキングを着用するのが一般的なマナーとしながらも、寒冷地や冬の寒い時期には黒タイツを着用することが多いことからも分かる通り、地域などによってもマナーの運用は変わります。また、皆さんが働いている職場だけに通用する “ローカルルール” と呼ばれるマナーも存在するかもしれません。 多少オリジナルなやり方でも、それによってそこにいる皆が円滑に良好にやり取りができているのなら良いといえるかと思います。(ただ、これは自分達独自のやり方で、他の人がいらっしゃる時は違う、ということは頭の片隅においておきたいですね。)
今回は マナーを身につけた人が 気を付けたい3つのNG についてみてきました。部下や新入社員の方にビジネスマナーを教える立場の人、また、マナー講師を目指している方などは、きっとマナーへの意識が高く、これまでご自身が努力して身につけ、実践されてきたことと思います。しかし、その頑張りが、違う方向に向かって、煙たがられるとか、周囲の人をマナー嫌いにしないように、「マナー 知識 < 相手の気持ち」 でありたいですね。
もちろん、正しいマナーを伝えてはいけない、という意味では全くありません。どのようにマナーを伝えるか、現場で活用できるように、「指摘や注意の仕方」、「褒め方」ほか、楽しい コミュニケーションの研修も行っていますので、よろしければ お気軽にお問合せください。(マナー支援・コミュニケーション/マナー研修のお問合せはこちら→ https://4cs-i.com/contact/ )
それではまた次回、お会いしましょう。最後までお読み頂いてありがとうございました!
〈2021年12月17日投稿〉
株式会社フォーシーズインターナショナル
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